旅の話の続き
いろんなブログめぐりをしていて「この人がいいというんだから行ってみよう・買ってみよう・食べてみよう」ということに出会うときがあります。
ピカソ展もその一つ。
かなり賑わったそうで、あちこちのブログで見かけました。
(今更この話題、ですがまあ、備忘録として・・・)
ワタシがピカソについて知ってることは「キュービズム」とか一部のタッチくらい。
要するに美術の教科書に載っていたことくらいです。
ブログめぐりをしていて気になったのはピカソの女関係。
大勢の女性と付き合ったこと、自分から去っていった女性はひとりだけだったこと、ピカソの死後二人の女性が自殺をしてしまったこと・・・
どんな人なんでしょう?
芸術家としてはいろんな作風の時代があってそれぞれがかなり異なっている(しかもそれぞれ完成されてる)のも興味深い。
ムラカミハルキが人にはそれぞれピークがある、ということを書いた文章(原典が思い出せないけど)で
「ピカソのようにピークなんで関係なくて80いくつで死ぬまで力強い絵を描き続けた・・・」という風に書いていたこともあった。
これは作品を見る前になにか予備知識があったほうがよさそう・・・
ということで図書館でピカソ関係の本を探してみました。
アリアーナ・S・ハフィントン「ピカソ 偽りの伝説」
すぐ入手できたのはこの本だけ。
例によって用意周到・・・とはいかないので分厚い本ですが持っていくことに。
まあ、移動の多い一人旅だから本は分厚いほうがいいのです(重いけど)。
好き嫌いからいうとワタシは「青の時代」に属する作品が好き。
柔らかい色合い、シンプルな構成。でもすごく力強い。
踊り子のオルガが「ワタシを描くなら歪めたり誇張したりしないで」といったらしいけど
その気持ちはよく分る。
ピカソは付き合ってる女性をよく描いていている。
「ピカソのような芸術家のミューズになりたいと思う?」
上巻P.32 マリー・テレーズ・ヴァルテルと「黒い椅子の上のヌード」(右の絵)
ピカソはマリー・テレーズとドラ・マールと、同時に付き合っていて
展覧会では二人が同じ構図で描かれている絵がそれと分るように展示されていました。
二人に同じポーズを取るように云ってたわけよね・・・
二人がピカソを巡って殴りあいをしたのは有名な話。
ドラは有名な写真家で、あの「ゲルニカ」の製作風景も写真に収めている。
殴り合いはその現場で、ピカソは傍観していたそう・・・
ドラは自分を表現する方法があったから自己主張もしただろう。
その強さをこんな風に描かれたような気がする。。。「泣く女」
テレーズはピカソの死後、自殺してしまっている。
まあ、芸術家が人格者だなんて誰も思わないし
品行正しいとも思ってないけど、ちょっとこのヒトは酷すぎませんか。
二股、同時進行、当たり前っていうのは魅力的なお方にとってはある意味当然なんでしょうが
ピカソの場合、年とともにそれが悪魔的な意図でされている。
成功した芸術家が自分の作品こそが一番大切なもので
それを生み出すために自分は何をしても許される、という風にいうのは
ちょっと才能のあるヒトがよく言いますけど
ピカソのはまた違って、なんというかヒトを傷つけるのが目的のように見えてきます。
唯一自分から去っていったフランソワーズ・ジローの例。
二人の子供を連れてピカソの元を去って別の画家の男性と結婚していたフランソワーズですが
ピカソの妨害で自分も夫もパリの画壇に受け入れられないでいます。
子供達にピカソの名を名乗らせられるように、書類上ピカソと結婚することを受け入れるのですが、
彼女が離婚したタイミングを狙ってピカソはそのとき付き合っていたジャクリーヌと結婚してしまいます。。。
でもジャクリーヌのことは愛してなかった、ようですが。
下巻から「小便をする女」
本の見方に染まってるな、というのは思うのですが
実際の作品を展覧会でみて自分がどう感じるだろう、見方は変わるだろうかと興味がわきました。
人生が修羅場であっても作品が素晴らしければいいではないの(常套句ですが)
でもですね、実際の「泣く女」。
これなんというか悪意を感じる。
芸術作品というよりも・・・たまたま書き手にチカラがあるだけ。
その分、破壊力もすごい。
そういえば・・・
ずいぶん昔に京都でもピカソ展があって、見に行ったのでした(すっかり忘れていた)
94年か95年。「ゲルニカ」の等倍の写真(?)が呼び物で、
ゲルニカはすごいと思ったけど・・・
「泣く女」も来ていた。
一緒に行った子が「なぁ、ピカソ、好き?」と聞いてきて「いやぁ・・・キライかも」。
力強いと思った作風も、ワタシには忘れえるくらいなのか。
展覧会は国立美術館とサントリーと二ヶ所であったので両方行くつもりでしたが
すっかりピカソの毒気に当てられた感じで、国立のほうだけでギブアップ。
はーなんか疲れたよ。
とはいえ、本を読みながら美術館に行ってその世界にとっぷり漬かるのは楽しかった。